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2009年4月21日 (火)

ブラジル人の行く末4 -帰国支援

3月あたりから矢継ぎ早に、日系人に対する支援策が発表されています。特に失業中の帰国希望者向けの支援策が、岐阜県独自(*1)でまず実施され、遅れて厚生労働省による施策(*2)が4月1日から始まり、ようやくその具体的な中身が明らかになるにつれ、日系人たちに波紋が広まっています。

*1 岐阜県:日系ブラジル人の帰国を全国初支援 

東海労金と連携 岐阜県は東海労働金庫(名古屋市)と連携し、景気悪化で職を失い帰国を希望している県内在住の日系ブラジル人に帰国費用を無担保、無保証で融資する事業を行うことを決めた。事業費は約1億円。県によると、自治体による外国人の帰国支援事業は全国で初めてという。 岐阜県内で外国人登録している日系ブラジル人は約2万人おり、雇い主側の都合で失職した人は2月初旬段階で3000人を超えている。 県は、資金がないため帰国したくてもできない人が家族を含めて約700人いるとみている。 帰国支援事業では、昨年8月以前から県内に在住している日系ブラジル人に、東海労金が航空券代として1家族60万円を限度に融資する。金利は1・5%。返済は5年間の均等払いで、回収不能となった場合は、県の外郭団体「県国際交流センター」が多文化共生事業の事業費から労金へ返済する。 同労金は説明会を10日に西濃総合庁舎(大垣市)で、12日に可茂総合庁舎(美濃加茂市)で開く。【宮田正和】

毎日新聞 2009年3月4日 中部夕刊

*2 失業日系人に帰国旅費30万円、厚労省、再入国はできず 

厚生労働省は31日、失業した日系人に、母国への帰国旅費として1人30万円(扶養家族には20万円)を支給すると発表した。雇用情勢の悪化で仕事を失い、日本語が話せないために再就職が難しい日系人が急増しているため。4月1日から全国のハローワークなどで申請を受け付ける。

 失業手当の受給期間が30日以上残っている人には10万円(60日以上なら20万円)を上積みする。ただし、旅費を受け取って帰国した場合、日系人の身分に基づく在留資格での再入国はできない。

朝日新聞 2009年3月31日

ここで双方の違いと共通点をまとめてみます。
1)岐阜県独自の支援策はあくまでも帰国用のエアーチケットに相当する額を融資するもので、従い返済を伴う。厚労省版は義援金で、返済義務はない。
2)岐阜県版は返済をする限り、日本への再度の入国に制限はない。厚労省版は入国制限があり、現在と同じビザは出さないとしているので、実質日本での就労はこの先不可能。
3)共通点としては、双方とも国内でその支援金を受け取ることはできない。岐阜県版は航空券がお金に相当し、厚労省版は、30万円(本人の場合)から旅行代理店発行の航空券相当額を差し引いたものが、本国帰国後に振り込まれる。

そして、これら支援策を受けて日系人たちがどう動いたか。岐阜県では説明会に参加した人は200人と集まったものの、実際に申込をしたのはたったの55家族130人でした。(想定は700人)理由はいくつかあります。あくまでも融資なので返済義務が生じるが、向こうの給料は当然安いし、返済の手数料が高い、それにもまして、ブラジルでは働く口が日本以上に少ないのに、どうして返せるのかと考えた。また、国の支援策が義援金だという情報も流れはじめていたとも言われています。

厚労省版支援策の説明会は4月半ばから徐々に各地で開かれています。その中身、特に同等のビザで再入国できないという条件が、日系人たちには評判が悪い。「厄介者払い」、「差別だ」と憤っている人もたくさんいると聞きました。ちなみに僕はこれは「手切れ金」と言ってます。
愛知県内では、豊田に400人、豊橋に400人集まって関心の高さをうかがわせましたが、名古屋は何と170人しか参加しなかった。僕自身、そのうちの名古屋の説明会に17日、参加してみました。ふだんはコンサートで使われるセンチュリーホールがお通夜のように重苦しい雰囲気に包まれていました。仕方ないのだけれど、ブラジル人のような普段陽気な人たちの集まりなのに、実に静かで暗いのです。檀上の厚労省の人と通訳が一方的に進める説明会にはあまり反応がなく、ロビーでは、当日の受付係りのブラジル人通訳が何人もいて、手持無沙汰にしている姿が実に印象的でした。

結論から言えば、こちら厚労省の支援も思ったほど利用しないのではないかと思いました。30万円を、特に失業保険もらっている人なら3カ月分ぐらいの金額を今もらって、定住者あるいは永住という最特権のビザを失うことに抵抗感があるのでしょう。景気が良くなったら1か月で稼げる金額ですから。
ブラジルで同程度の仕事でどれだけ稼げるか、あるいはその職にありつけるかという不安、日本の生活に慣れてしまって、自分自身がブラジルでもはや生活できないという思いもあるのではないでしょうか。子供がいればその子の教育も考えねばならないはずです。結局のところ利用価値の高い人は、お年寄りで就労のための再入国意思のない人、失業保険が切れても仕事が見つからず、日本に幻滅して帰国を決意する人ぐらいでしょうか。

一方で、政府は現在失職中だけれどこれからも日本で就労を続けたい人向けに、「就労準備研修」と称して、日本語学習の機会を拡充する予定だそうです。が、未だ具体的なプログラムは決定していません。JICA(国際協力機構)と関連するJICE(日本国際協力センター)がそれを主催し、「日系人集住地域で開催」とだけ発表されています。まず、帰国を促すのが先という考えの表れでしょうか。本当なら、帰国支援と同時に進行しても良かったと思います。だから、帰国支援が厄介者払いの政策と言われるのかもしれません。浜松の市長が「制度に問題」と、国に改善を要望するようです。

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